2022/03/29

科学的哲学的論考  ▶原発講座(6)福島原発爆発のもう一つ  固有安全性は間違っていた? (武田邦彦先生)


本日の収穫(3499文字) 

我々日本人がですね
原子力発電所を安全だと思って
もちろんこう被爆するのは嫌ですからね
安全だと思って実施したのは
専門家がですね
政府とか専門家が原子力発電所は
固有安全性と多重防御で守っているので
大丈夫ですと
こういったことによるんですね
ですからそれは政府とか原子力関係者が
国民に対して約束したことなんですね
そのうちの固有安全性は
どうも間違ってた可能性があるんですが
私がここで間違ってた
可能性があるというのは
どうしてこう言い回しをしてるかって言うと
事故の後ですね
固有安全性が間違ってた可能性が高いんですが
それについてですね
私は原子力学会のフェローでもあり賞ももらって
ずっと原子力学会に参加してたんですが
事故が起こってですね 原子力の安全性に対して
疑問を社会に発した途端にですね
お呼びがかからなくなっちゃったんですよね
これはもう学問じゃありませんし
学会でもないんじゃないかと私は思うんですよ
恐らく原子力学会に所属する方で
非常に正しい方 誠実な方がおられますからね
その方はやっぱり
みんな固有安全性というものに
自分たちは間違ってたんじゃないかっていう
反省があるんじゃないかと思うんですね
科学者っていうのは反省を素直に認めて
間違いを認めないとですね
間違いがまた間違いを呼びます
固有安全性に関する疑問は
事故が起こってみるといっぱいあるんですね
一つはですね 温度が上がっていく時に
それで水が蒸発していってですね
それで減速材として役に立たなくなる時に
中性子の速度が
減速するものがなくなってしまいますので
核分裂が続かないと
これが軽水のいいところだと言ってたのがですね
これは私もちょっと
必ずしもぴたっと専門ではないんですが
一応計算してみますと
実は核分裂が継続しなくてもですね
単に崩壊熱 つまりですね
原子力発電をやってますとね
燃料の中に非常にこう原子核が
崩壊しやすいものがたまってくるんですね
その崩壊熱っていうんで
常にかなり温められてるわけですよ
だから核分裂の熱と
ウランが核分裂する時の熱と
核分裂してできたものですね
例えば皆さんがよく知ってるのは
ストロンチウム90とかセシウム137とか
その他いっぱいできるんですが
そういったものがこう更に
非常に不安定なんで分裂していくんですね
自分で分裂してきます それの熱
この発熱をちょっと私が計算してみるとですね
あれっと思ったのは
それだけで原子炉が
爆発する感じがするんですよね
ですから我々が今まで言ってた理屈ですね
温度が上がる軽水炉の場合
温度が上がると水が蒸発するので水の
減速効果が弱まって核分裂は継続しない
したがって軽水炉は
固有安全性を持っているといういう論理自体が
破綻してた可能性があるんですよ
水が蒸発して減速しなくなり
中性子の吸収断面積が小さくなって
次の核分裂は繋がらないと思われていたが
既にその時に炉の中にある
核分裂生成物から出る熱でですね
十分に原子炉を爆発させる可能性があると
言わなきゃいけなかったかなと
だから軽水炉は固有安全性を
持っていないとも言えるわけですね
まだ問題があってですね
実は温度が上がってきますね
鉄の融点は1700度くらいなので
1700度を超すとですね
鉄が解けていくわけですね
ですから1700度まで行ってはいけないわけですが
核分裂生成物だけで
1700度に行くような感じがするんですよ
そうするとですね
1700度以上行くようになると
水が直接熱で分解する可能性があるんですね
水が熱で分解するのは純粋な水ならですね
4000度ぐらいなりますと
水は自然に水素と酸素に分離するんですが
色んなものが入ってますとね
例えば水の熱分解によってですね
水素と酸素を作るっていう技術があるわけですが
これは水素エネルギーを作るという
技術の中にあるんですけれども
それをやるとですね そうすると850度とか
900度ぐらいで水が分解するんですね
ですからそれを850度としますと
何か原子炉の中に
色んな金属とか色んなものが入ってますから
それがですね 水の分解を
熱分解運動を下げている可能性があるわけですね
これについても必ずしも
今まで言わなかったわけです
そうすると水素と酸素がどんどん出ますので
今度は水素と酸素が出ると
水素爆発を起こしますね
ですからこれは核爆発ではないんですけど
水素爆発が起こるわけですね
今度の 今度っていうか
福島第一原発の爆発は一号機と
一号機は水素爆発のような感じがするんですが
煙も白いしですね
三号機はですね
爆発がかなり垂直に上部に行ってるので
それから色が非常にこう爆発の混合気が
茶色であるっていうのがあってですね
もしかすると一部
核分裂が含まれている可能性があり
実際に原子力関係者
海外の原子力関係者で
三号機は核爆発だと
言ってる人もいるんですね
四号機は三号機からの水素が
四号機の使用済み燃料プールに行って
そこで水素爆発を起こしたと
一応考えられているわけですが
いずれにしても固有安全性が保たれてない
元々保たれていない構造だったという
巨大な間違いがあったんじゃないかと
私は思うんですよ
それで多重防御というのはですね
現在でも守られてない可能性もありですよね
それから固有安全性が
元々存在しなかったっていうことになるとですね
これはもう政府と原子力関係者が
巨大な嘘をついていたってことになるんで
到底国民がですね
原子力発電所に賛成するはずがないんですよ
それでちょっと思いつくのはですね
2006年に私が
原子力安全委員会の専門委員だった時にですね
これまでの原子力発電所は
絶対安全というのをやめて
想定外の時は爆発すると
事故は起こるという風に変える提案があり
私それちょっとかなり
部分的には反対したんですが
その時にですね なぜ
2006年にそれが提案されたかって言うと
恐らくですね 私が分かるぐらいですから
原子力の核物理をやってる専門家はですね
軽水炉の固有安全性は 元々
間違ってるんだということが分かってたんじゃないか
それを政治的に抑えて
例のその想定外のことが起こったら
原子力発電所は
危険であるということになったんじゃないか
しかし固有安全性というものが
失われているということを
実績に失われているということが
分かっていたとしたら
それはやっぱり想定外じゃありませんよね
それからもう一つは今度のことでちょっとこれは
固有安全性に直接的には関係ないんですが
何らかの原因で水素が出た時に水素が
もちろん水素ですから
これは普通の爆発ですよね
工場爆発なんかと同じような水素による爆発
水素っていうのは物凄く爆発範囲が
広いっていうか低いんでですね
もう二パーセントもいきますと
空気中に二パーセントの水素が出ますと
それで爆発する可能性があるという
極めて危険なものなんですね
最近では環境問題で
水素がもてはやされていますが
水素はその燃えるのはクリーンなんですね
燃えるのはクリーンなんです
だから燃えれば酸素と結合して
水が出てくるだけですから
ですけれども水素には
大きな問題があって爆発範囲が広くて
ちょっと取り扱いを間違うと
爆破するっていうことと
それから水素脆性っていう問題があって
金属の容器に入れておきますとね
水素によって金属が脆化して
脆化するっていうのは
弱くなるっていうことなんですが
それでやられるっていうこともあるんですね
この固有安全性の問題は
このように非常に複雑なんですが
少なくとも日本には
二百四十万人の技術者がいてですね
二百四十万人のうちの一割ぐらい
少なくとも二十四万人ぐらいはですね
その専門家がきちっと固有安全性の
計算値を出せば理解できるんですよ
要するにこの世の中はですね
本当の専門家つまり核物理の専門家以外に
その周辺に私のようにですね
技術問題を正確に判断理解できる人が
数十万人いるっていうのが
日本社会の強みなんですよ
だからもしも本当の専門家ですね
核物理を計算している人たちが気が付いたら
それがオープンになるようなシステムが
なかったんじゃないか
これは固有安全性がなかったと
一応知っておいてですね
軽水炉現在日本で運転している軽水炉は
固有安全性が
なかったんだということに一応してですね
誠意ある態度としてはですよ
それでみんなで核物理の人がよく説明して
それで我々核物理の周りにいる技術者がですね
技術者とか科学者が理解をして
それでそれを日本社会に伝えると
そういうことをやらないとですね
原子力発電所は全部危険になります
つまり多重防御と固有安全性があるので
安全であると言ってた
安全とかそういうものはね
単純なことを言わなきゃ駄目なんですよ
なんか検査がどうとか検査システムとか
そういうのはその次に必要なことであって
まずは原理原則がですね 理解されて
本当でなければいけないということですね

2022年3月23日

#武田邦彦 先生

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